シラフでは付き添えない!?



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亡くなる寸前の患者家族が、泥酔状態!

脳出血で入院した女性の付き添いは・・・酔っ払い!?

私が脳外科病棟に勤務していた時代の話です。
70代の女性が、脳出血で入院しました。
挿管・人工呼吸器を装着し、なんとか持ちこたえたという状態で病棟へ運ばれてきました。

医師は家族に、病状を説明しました。
この女性は手術適応もなく、このまま看取りの方針となりました。
それも、数日だろうと医師は説明しました。

その日の夜、病室から男性の大きな声が聞こえてきました。
準夜をしていた私は、ビックリ。
面会時間は19時まで。
時間はもう20時を過ぎており、面会時間をとうに過ぎています。

しかし、この患者さんは状態が悪いため、夫がずっとつきっきりでそばにいたのです。
その夫が、大声を上げています。
そして部屋の入口から顏を出して、廊下に響くような大声で何かを言っています。
呂律もまわっていないし、会話が成り立つ状態ではありません。

私は先輩に助けを求めました。
このままでは他の患者さんの迷惑になってしまうし、もし呼吸器を触られたりしたら困ります。

なんとか先輩がなだめながらエレベーターに乗せて、自宅へ帰るように言いました。
(どうやって帰ったかはわかりませんけど・・・泥酔してましたからね)

その先輩はとてもデキル人だったのですが、普段近寄りがたい怖い人でした。
優しいとか、助けてもらったということがなかったんですね。

しかしその時の私は、言葉は悪いのですが、酔っ払いのあしらいかたに「すごい・・・。」と惚れ惚れしてしまいました。
そしてホッとしました。
大事になる前に帰ってくれてよかった・・・。

病室で飲酒のワケは?

当時まだ1年目だった私は、とにかくその患者家族とどう接してよいかもわからないし、そんな「飲んだくれ」を相手にしたこともありません。
まず最初に抱いた感情は“困った”でした。

しかし、少ししてから今度は“怒り”に変わりました。
だって、ずっと連れ添って来た奥さんが脳出血で、数日の命と言われているんですよ!?
それなのに、こともあろうかお酒を呑んで、病棟中に響き渡る大声を上げるなんて。
奥さんも、死んでも死にきれないだろう、と思ったのです。

私も若かったなあと思います。
なんせ、まだ22歳でしたからねぇ・・・。

今なら、少し違った見方ができます。
夫は、妻のことを大事に思っていたが故に、脳出血で今にも亡くなりそうという状況を受け入れられなかったのではないでしょうか?
もともと、お酒に逃げるような弱い人だったのかもしれません。
重症だからこそ、この時もお酒を飲んだのではないでしょうか?

一度夕飯時には、夫は病室を空けています。
患者家族の分の食事は出ないのですから、当然です。
おそらく食事を摂りに行って、そこで寂しさや不安や、いろいろなやりきれない感情がこみあげてきたのではないでしょうか。
だから、お酒をたくさん飲んで、病室にまた戻ってきた・・・。

そばにいたい、でもシラフではいられなかった。
今の私は、あのときの状況を振り返って、そう思えるのです。

とはいえ、泥酔状態で病室にいられては困りますから、あの時は帰ってもらうしかなかったと思います。
いくら患者さんの状態が安定していないとは言ってもね。
でも、ただの酒飲みではなくて、奥さんのことが大事だからこそのお酒だった・・・そう思うのです。

患者さんは、翌日に亡くなりました。
私は準夜明けの休みだったので、そのときの夫の様子を知りません。
でも、お酒に頼らずに受け入れられたのかな・・・。
なぜか15年以上も前のことですが、そんな風にふと思いだしました。

看護師には、ただ病気を看るだけではなく、人としての心を読み取った関わりをとれるような器も、必要なのですね。