低酸素脳症の理由は・・・



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2回も家を建てるなんて・・・

両親との確執から自殺未遂、低酸素脳症で寝たきりに

私が新人として脳外科病棟に配属した時、まず最初に受け持ったのは、24歳の寝たきりの患者さんでした。
この患者さんは、皆にYちゃんと呼ばれていました。

当時私はまだ21歳でしたし、本当の新人でしたから、他のスタッフのようにYちゃんとは呼べませんでした。
でも、それ以上にそんな気やすく呼べなかったのです、気分的に。

Yさんが24歳という若さで寝たきりになってしまったのは、低酸素脳症のためでした。
そしてなぜ低酸素脳症になったかというと・・・首吊り自殺でした。
自宅で自殺を試み、危機一髪というところで両親が発見し、救急搬送されたそうです。

かろうじて命は助かったものの、Yさんは本当に寝たきりになってしまいました。
目は開いていますが、話をすることができません。
ときどき、何かのひょうしに声を出すくらいでした。

私が会ったときにはもう病状が落ち着いていましたが、入院当初は呼吸状態が悪かったため、気管切開をしていました。
痰が多いため、1勤務で何度も吸引する必要がありましたし、口角からは流延が止まりませんでした。

Yさんは既に話ができませんし、入院して1か月近く経過してから私が配属されたので、私は改めてYさんの自殺の経緯やそれまでの生活について触れることはしませんでした。
しかし、病状が落ち着いてくれば退院を検討しなくてはなりません。

ご両親と主治医とで話し合い、Yさんは自宅で介護することになりました。
現実的なことを言ってしまえば、Yさんはまだ24歳ですから、高齢者のための施設には入ることができないのです。

経管栄養・吸引・オムツ交換・体位交換・・・全て脳血管疾患で寝たきりになってしまった高齢者と、同じケアが必要です。
しかし、Yさんはまだこれらの施設を利用することができません。
両親も、高齢者の施設に入れようとは思えません。

そんな退院の話が持ち上がってから、少しずつ家族への指導を進めることになりました。
指導できる立場にもありませんから、私はまだその日の受け持ちナースでしかありませんでした。
もちろん、毎日病室に来ているご両親も、私が頼りのない新人であることは解っていました。

ところがある日、Yさんのお父さんが私にポツリと言いました。
「家ってね、人生で1度きりの買い物だと思うでしょう?
でも、この状態のYをそのまま家に連れて帰ることは難しくて。
家をもう一度建てることになるとは、思わなかったよ・・・。」

ご両親は、Yさんの介護がしやすいようにリフォームではなくて、新たに家を購入するという決断をしたようでした。
Yさんと自分達2人の、これからの老後の生活も見越してのことだと思います。

介護のためにリフォームすることはよくあることですが。
家を建て直すなんてことは、聞いたことがありません。
確かに介護と老後の生活を考えてのことだとは思いますが、私にはそれだけではないように思えたのです。

小さかった頃のYさん、確執があった頃のYさん、そして首を吊ったYさん・・・いろんな光景が思い浮かぶ我が家に、もう寝たきりとなったYさんを連れて帰ることは、心情的にもできなかったのではないでしょうか。

Yさんは、ご両親との仲がうまくいっていなかったということは聞いていました。
でも、お母さんは毎日病室で過ごしています。
お父さんも週末は必ず来て、顏の涎を拭いてあげたり、髪をなでたりしています。
二人とも、とてもSさんを愛しているのがわかります。

Yさんはそのご両親から、愛されていないと思ったから自殺しようとしたのでしょう。
でも、実際はそんなことありません。
それに、御両親にこれから一生オムツを変えてもらい、服を着せてもらい、歯磨きもしてもらう・・・。
直接聞いて応えてくれるはずもないのですが、どんな気持ちなんだろうと考えてしまいました。

そして、2回も家を建てることになったお父さんの気持ち。
新人が接するにはなんとも重い症例でした・・・。



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