急変!大変! 除脳硬直!!



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これぞ急変!!除脳硬直

30分後には、どうなっているかわからない!?

脳梗塞を発症すると、脳浮腫を起こす時期があります。発症から2~4日後にピークを迎えると言われています。
足なら浮腫を起こしても、命に直結することはありません。
ところが、脳浮腫は一大事です。頭蓋骨で固められた中で脳がむくんでしまうわけですから、むくんでいないところが押されてしまうのです。
脳浮腫が起こると、その次に起こりうるのは脳ヘルニアです。どこを圧迫されるかで緊急度は異なりますが、呼吸・循環全てを管理しなくてはならず、ICU入室が必要になる状況です。

脳浮腫がどのような状態を起こすか、私の1年目の記憶を遡って、お伝えしたいと思います。
Nさんは、脳梗塞を発症して救急搬送された患者さんでした。入院直後から意識はあり、会話もなんとか可能な状態でした。
私はその日、日勤でNさんの担当でしたが、日勤帯ではとくに変わったことはありませんでした。夕食前には、家族と話をしている姿も見かけていました。

日勤の残り仕事をしていたら、後ろで先生や先輩がミニカンファレンスのようなものを始めました。Nさんについてで、どうやら脳浮腫を起こす・もしくは起こすのではないかというもの。
でも症状には現れていないし、私はそのまま自分の仕事を片付けていました。

そして夕食も終わった19時過ぎ、準夜ナースが走って先生を呼びに来ました。
「Nさんのレベルが低下しました! 除脳硬直です!!」

ぽかんとしてしまった私に、同じように日勤で残っていた先輩がすぐに「行け」と私の背中を押したため、とりあえず行ってみました。
するとそこには、家族と会話を楽しんでいたNさんの姿はなく、四肢を突っ張り、口から泡を吹いて、目が上転している姿がありました。
NさんはそのままICUへ移り、ICU管理下で開頭減圧術の準備に入りました。

急変は怖い、でも予測可能なこともある!?

この事例で、私は初めて除脳硬直というものを見ました。意識レベルを調べる上で、GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)を使うことがあると思いますが、除脳硬直はその中でM(運動機能)が2点です。その下は「痛み刺激を与えても全く動かない」1点。そのくらいの緊急事態。
先輩が私の背中を押した理由は、手伝いに行けということではなくて、「本物の除脳硬直を観て来い」ということだったんですね。

ありがたいことに、それ以降は除脳硬直を起こした患者さんに会っていませんから、本当に私が見たのはあの1回です。
でも、10年以上経った今でもその人の名前とあの姿勢、顔つきを覚えています。それくらい強烈なインパクトだったんですよね。

この急変、私は勤務交代をした後だからただ「観に行った」程度でしたが、いざ自分が担当の時の夜勤で起きたら、ICU入室の段取りだけでなく、残った他の患者のケアや観察、点滴といった処置もこなさなくてはならないわけで、それをどう残りのスタッフに頼んでいいかも判断しなくてはなりません。

実はこのときの担当ナースは、ある程度の予測をしていたのです。今日は荒れそうだから、それまでに最低限のことは済ませておこうと。
そして、Nさんに要注意だと。

なぜ1人の看護師がそんなことを予見できたのでしょうか?それはNさんの発症から経過した日数です。ちょうど今、腫れる時期だよな・・・というなんとなくの予想。加えて、担当の先輩ナースは、事前に医師に聞いて置いたのです。「そろそろNさん、腫れる時期ですか?今日のCTどうでした?」って。
そして、Nさんに注意を払いつつ準夜のラウンドは優先順位をつけて周っていた。もし何かあったらどう動こう・・・ということも、頭の中では考えていたでしょう。

家族からのコールで急変に気づくわけですが、まさに「キターッッ!!」って具合に、対応したのです。
実はその準夜の担当ナースは、私の1つ上。つまり、当時はまだ2年目だったのです。とくに威張るでもなく、いつものほほんとしていた印象の強い先輩ですが、この事件を機に見る目が変わったのは言うまでもありません。
そして今、その先輩は認定ナースになり、ICUプのロとして、10年以上在籍しています。いやあ、私とはえらい違いです・・・。すごい人は、本当に若い時から違うものです。

この先輩のように、病態から危険を予測して医師にまで確認しておく・・・なんて、いつでも誰でもできることではありません。
ただ、私がこの症例でお伝えしたいことは、人間30分あれば急変を起こしうるものだということ。そして、その前に何かしらのサインを発していることがあるということです。

実は、心肺停止の80%近くが、「停止8時間前までに異常なバイタルサインを示している」
というデータあり、それが昨今大きな病院で導入が勧められているRRT(Rapid Response Team)という迅速対応チームを設ける根拠ともなっています。
つまり、この間にRRTによる介入を行えば、心肺停止にまで至らないのではないか、という理屈です。

私自身は、日勤帯からNさんを観ていて、異常に気付いていませんでした。だからこそ、準夜に入ってからの急変にビックリしたのですから。
でも、この2つを頭において置けば、もう少し違った観察をしていたかもしれません。家族との会話の様子も、本当は何か徴候が現れていたかもしれません。

みなさんもあるかと思いますが、「バイタル3検」となると、準夜の始めで測ってそれで終わり、「自分の勤務で1回、ちゃんと測ったもんね~」と思っていませんか?
しかし、30分あれば状況は変化するのであり、指示通り測って終わりではありません。

病棟だけでなく、外来勤務をしていたって、いつこのように急変が起こるかわかりません。患者の発するサインに早く気付き、適切な対応のとれる看護師になりたい・・・という思いで、今日も働いています。