DNRは家族の一言で覆る



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DNRは覆る

DNRとは?

DNRとはDo Not Resuscitateの頭文字をとったもので、心肺蘇生を希望しない・挿管や胸骨圧迫を希望しない、という意味です。
また、同じようなものとしてDNAR(Do Not Attempt Resusciation)、蘇生を試みないという意味の言葉もあります。

どちらも、心停止を起こしたり急変が起こったとしても、望まない蘇生治療をしないでくれ、ということです。
何も治療をしないということとは別です。
酸素投与や点滴・投薬といった基本的な医療を何もしない、ということは倫理上、実際は認められません。
あくまでも死が目前に迫った時の高度な治療に対してどうするか、を問うものです。

DNRの意向は、“死ぬときは自然に死にたい”という本人の死生観もありますが、多くは残された家族への負担を考えて、患者本人から言われるものです。
何かしらの疾患に罹って治療中の人は、「もし今自分があの世へ行ってしまったら、家族はどうなるだろうか?」ということを考えます。
医療費の負担だけでなく、コミュニケーションすらとれないのに寝たきりで生き続けたら、介護する家族が困る、子供が結婚できない・・・そのようなことを考えるものなのです。

そのため、患者本人は病院側に対して、もしもの時は蘇生処置を希望しない=DNRの意思表示をするのです。
ところが、これはあくまでも本人の希望。

家族も同じようにDNRを希望しているとは限りません。
また、いざお迎えの時が来ると、本人・家族共に納得して出したDNRの方針も、取り乱した家族によって覆ることもあります。

最期の最期で、胸骨圧迫に挿管のフルセット

私が呼吸器病棟に勤務していた時のことです。
50代前半の男性Sさんが、肺癌で入院していました。
小細胞癌でとても進行が早く、見つかったときにはもう手術はおろか、ケモももう効果を成さない、ターミナル期にありました。

この男性、子供がまだ高校生と大学生でした。
あの当時は、少し遅くにできた子なんだなぁ・・・と漠然と思ったものですが、今自分が親になってみれば、50代なんて子供はまだ親の保護下から抜けていません。
特に晩婚化が進む現代では、50代で子供が幼稚園児なんて、ザラにいます。

そしてそんな50代前半、まだまだ働きざかりのお父さんが肺癌になってしまった。
それも、もう積極的な治療の適応にない状態・・・。
ペインコントロールメインの、ターミナルケアになりました。

肺癌の最期というのは、疼痛に加えて呼吸ができなくなって苦しくて苦しくて・・・生き地獄のようです。
「もう逝かせてくれ・・・」とあえぎながら訴える患者さんもいます。

Sさんも最期の5日間は、呼吸苦と疼痛で身の置き所がなくなっていました。
臥位をとることもできず、オーバーテーブルに枕を置いて抱えたり、それさえも疲れてしまうとファウラー位になったり・・・付き添っている妻もどうすることもできず、ナースコールは頻回になっていきました。

そしてある日の午後、遂にSさんが「もう眠らせてくれ・・・。逝かせてくれ・・・。」
家族に謝りながら、もう頑張れないと訴えました。
主治医はセデーションをかけたら、本人は苦痛から解放される。
しかし、そのまましゃべることもできずに亡くなるだろうと説明しました。

本人はすぐにでもセデーションを希望していますが、妻は受け入れられません。
結局、高校生の息子が病院に駆け付けたら開始することになりました。
準夜に入っていましたが、息子が病室に訪れて最期の分かれの言葉を交わし、家族から「お願いします。」と言われてからセデーションを開始しました。

そのまますぐにSさんは眠り始めました。
ようやく、苦痛にあえぐ顏が消え、見ているこちらもほっとしました。
すぐにHRが落ちることもなく、やっと安らかな家族の時間が過ごせたのです。
本人が会話できない、ということを除いて。

そして翌朝、私はその日深夜明けでした。
申し送りを済ませ、他の夜勤メンバー2人と、少し帰る前に一息ついていました。
私達も、“いつ逝くか”と気を張っていた夜勤だったのです。

ところがそこで、モニターのアラームがなり、ほんの少しの間をおいてナースコールが鳴りました。
その日は土曜日ということもあって、日勤メンバーが少なく、なかなかコールに出ません。
仕方なく、勤務を終えた私達が病室へ行きました。

回診にまわっていた医師も病室にかけつけました。
モニターはフラットです。
そう、遂に最期の時が訪れたのです・・・。

と思いきや、妻が叫びました。
「先生、助けて!!何とかして!!」
Sさんにすがりながら泣き叫びます。
私達はどうしたものかと顏を見合わせました・・・だって、DNRだったのですからあとは死亡確認だけのはず。
部屋には着替えも用意してありました。

しかし、妻は助けてくれと繰り返します。
医師が「挿管準備!!」と言い、胸骨圧迫を始めました。
そう、心肺蘇生を開始したのです。

すぐに救急カートを持ってきて挿管し、私達看護師は交代で胸骨圧迫とアンビューを押しました。
側管からボスミンも2度投与しました。

CPRを開始して30分程たったでしょうか。
医師が「奥さん、もう・・・」と言い、心配蘇生を中止し、死亡確認となりました。

本人の尊厳と、家族の意向

CPR自体も殆ど体験のなかった私にとって、一度とったDNRは覆ることがあるのだ、という最初の症例でした。
もう13年程前のことですし、自分のチームの担当患者でもなかったけれど、顏もフルネームも覚えています。
そのくらい、印象に残った症例だったのです。

どんなに本人がDNRを希望していたとしても、最期に一人でも蘇生を求める家族がいれば、それはそちらを優先することになるのです。
最近では尊厳死の意思表示カードをカルテにはさんである患者さんもいます。
しかし、残された家族が本当にそれを受け入れられるのか・・・やれることをしないで亡くしてしまった、と後悔するかもしれません。

本人の尊厳をとるか、残された家族の意向をとるか・・・こういった問題に対し、正しい答えというものは存在しません。
ですから、この症例が悪いというものではありません。
こういうこともあるのですよ、ということを覚えておいて欲しいと思います。



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