どこまで治療を継続するか?



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治療方法があるならば、とことん治療するべきなのか?

癌患者が、抗癌剤治療を止めるとき

以前お伝えした38歳で胃癌が発見された女性(詳細はこちら)、その後ポートを増設し、抗癌剤治療を開始しました。
まだ38歳という年齢と、腹膜播種を起こしているという浸潤度もあり、とにかく早く早くと、治療を進めていきました。
本人達もとにかく早く、できるだけの治療を行って延命しよう(本人はもちろん、治癒を望んでいますけれど・・・)と、治療を受けてきました。

ところが、次第に抗癌剤による副作用がひどく現れるようになりました。
吐き気で食事が全く摂れない、食べても吐いてしまう・・・。
おまけに腎機能の悪化や好中球の減少もあり、抗癌剤をスキップせざるを得ない状況が出て来ました。

食事が摂れないから入院しているけれど、ただ対象療法をしているだけ。
同じ治療をしていない状態なら、抗癌剤をしなければ多少は食べられるだろうし、家にもいられる。

そう考えて患者さんは、医師と相談して1か月休薬することにしました。
この1か月、好きなことをして、行きたいところに行って、食べられるものを食べて来ると。

確かに、抗癌剤治療をすれば、休薬するよりも延命できるかもしれません。
しかし、病院のベッドで過ごす時間が長くなるだけでは、意味がないのではないか?
患者さんだけでなく、担当医も私達も、今まで遭遇したケースから、倫理観・死生観についても考えました。

治療法があることと、それを受けるかどうかは別の問題

以前、まだオペ適応のある大腸癌という診断を受けたものの、一切の治療をしたくないと拒否した患者さんがいました。
癌がそこらじゅうに浸潤してからでは、少しでも楽にするだけの姑息的なことしかできません。

それに、大腸癌はいずれ便の通過障害をきたし、イレウスや腸の穿孔を起こすことも伝えました。
だから、やるなら今だと医師は説明しました。

もう80歳を超えているから自然にまかせると、本人も家族も言いました。
しかし、イレウスを起こしてちょくちょく入院するようになってから、「今から手術してもらえますか?」と言って来ました。
これは、そんなことなら発見したときに治療しておけば良かったのに・・・というケースでした。

一方で、もう発見されたときにはメタだらけという胃癌の男性患者さんは、家族と少しでも長くいられるために・・・と、治らないとわかっている抗癌剤を最後までやりました。
やっては休薬・減量、またやっては休薬・減量というパターンを何度も繰り返しながら、やれるだけやりました。
この患者さんの場合、発見してから3年の時間をかせぐことができました。

大腸癌の人は治療をしなかったから間違い、胃癌の人は治療をしたから正しい、ということはありません。
おわかりかと思いますが、正解なんてありません。

今回のこの女性、年齢もまだ38歳と若いし、再婚したばかりでした。
少しでも延命してあげたいという気持ちもありますし、治療して入院ベッドにしばりつけていては、旦那さんとの時間もすごせない。

どちらがいいのか?
医師も本人も、かなり悩みました。
そして1か月の休薬を決めたのです。

この1か月の休薬が、どのくらい癌の進行を早めることになるのかは、誰にもわかりません。
それに、もしかしたらこのまま抗癌剤治療を止めるかもしれません。
すでに緩和ケアをメインとしてもよいくらい、進行しているのです。

どこまで治療を継続し、どこから中止するのかを決める、明確なラインなんてありません。
マーカーが上がって来ていたら、じゃあ他の種類の抗癌剤に変更しましょうとなります。
やろうと思えば、今の時代、何らかの治療法はあるのです。

でも、まだ治療の術があるからといって、それを受けなければならないのか?
そうではないんですよね。
残りが仮に半年しかない命だったとしても、そのほとんどを入院していて、家族と会うのは仕事帰りの1~2時間、ではどうなのでしょう?
残り1か月だけになったとしても、その1か月をずっと家族のそばでいられたら、それで十分という人もいるかもしれません。

1か月の休薬期間を経て、また抗癌剤治療を再開するのかどうか、わかりません。
でも、治療方法があるからといってどこまでも突き進めばいい、ということではないのです。
これからの医療は、ここを患者さんと共に考えていかなければならないのです。



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