死の間際に「まだですか?」という家族



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初めて現実を見た瞬間

まだですか?という人達

私が1年目の、就職してまだ1~2か月目のことだったと思います。1人の80代の女性患者さんの容体が変わりました。疾患はもう覚えていませんが・・・もう看取りの段階だったのだと思います。
先輩が家族を集めるように連絡をして、家族が集まりました。日曜日だったこともあって、1~2時間でかなりの人数が集まりました。

何時くらいだったでしょうか。
患者さんは既に個室に移動していたのですが、部屋に入り切れない親族が、廊下まであふれていました。
どれくらい親戚づきあいの多い人なのか、どんな人だったのかな・・・そんなことを考えると同時に、ぼんやりと準夜に持ち越すかなと思っていました。
私がそう思ったくらいですから、恐らく容体が変わって家族を呼んでから、数時間経過していたのだと思います。
といっても、状態が悪化したのが午前中、まだ日勤帯でした。

私がその部屋の前を通った時、「すいません。」と家族に声をかけられました。
私自身がその患者さんの担当ではなかったことと、ステルベンを受け持ったことがなかったこともあり、何か聞かれてもどう答えたらいいかわからないので、正直(困ったな・・・)と思いましたね。

そして患者さんの家族が私に言った言葉。
「あのぅ・・・まだですか?みんな呼んじゃったんですけど。」

家族は、容体が変わったと連絡をうけたのにまだ心肺停止しないことに対し、「まだですか?」と聞いてきたのです。
しかも、親族を集めてしまった手前、「そろそろ逝ってくれないと困る」と。

病院における死の、現実を知る

家族のその言葉に、ほんとにびっくりしましたね。
私自身、ステルベン対応の経験は全くありませんでしたけれど、まさか「まだですか?」と言われるなんて。

家族の衝撃発言に対し、はっきりとどう答えたか覚えていませんが・・・多分先輩を呼びに行ったのだと思います。
そして、先輩と一緒に家族の元へ戻ったはずですが、先輩がどんな風に応対したのか覚えていません。
とにかく、私にとっては「まだですか?」という発言が、ショックだったのです。

そのあと、その患者さんのエンゼルケアにも立ち会ったはずなのですが、それすらも覚えていません。
私はそれまで、人間の死を目前にして家族がそのような言葉を発することを聞いた経験がありませんでした。少なくとも、自分の祖父母の死の場で、そのようなことを言う人はいませんでしたから・・・。
それに、看護学生の実習では、出産には立ち会っても死に立ち会うことはありませんし。

看護師は、人の生死の現場で働く仕事です。
生は産婦人科でしかありませんが、死に立ち会うことはどの病棟でも、病院以外の職場でもありえます。
自分が働く世界は、こんなシビアな場所なんだ・・・と、この時初めて実感したのです。

その後、多くはありませんが患者さんの亡くなる場面に立ち会いました。大泣きして、遺体にすがりつく家族だっていました。
DNRをとっていても、間際になって「助けて!!」と叫んだ家族もいました。

しかし、死を待つような発言をした家族はいませんでした。
あの患者さんは、生前どのような人だったのでしょうか。
それを思い返すと、今でもやり切れない気持ちになります。

一つの命が終わるときというのは、その人のこれまで軌跡にピリオドを打つとき。生半可な気持ちでは勤められません。
そういう意味でも、人の死に立ち会う看護師という職は、事務職とは異なるのです。

働き続けていれば、これからもいろいろな死の場面に立ち合うことになると思います。しかし、一つとして同じ死はありません。だって、誰1人、全く同じ人生はないのですから。
死の間際、私達は患者さん・家族に何ができるのでしょうか・・・。