頭部外傷は何故起こった?



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転んだから出血?出血で転んだ?

この人に、今、何が起きているのか?

私は普段、外来に勤務しています。外来で初診の患者さんは、まだ病名が付いていません。
ただ検査に案内したり診察室に呼びこむだけなら、看護師でなくてもできます。
看護師として関わるのですから、主訴やバイタルサイン・症状から、「この人に今何が起きているのか?」を考えるようにしています。

ただのカンではなくて、このように見立てを行うことはとても重要です。先を読むことができると、その後の検査や処置・入院などがスムーズに・最短で行うことができるからです。
また、緊急の患者さんを順番通りに待たせてしまうことを防ぐこともできます。

例えば、ただ点滴と採血を同時に行うのではなくて、この先どうなるかを予想をたてて、とりあえず検査にはまわさなくても血糖や凝固をとっておこうかな・・・とか。
造影CTや緊急オペになることを視野に入れて22Gではなくて20Gでルートをとっておこうという具合に。
空回りすることもありますが、それが患者さんにとって負担がなくて、ただ私達の徒労に終わるだけならそれでよし、という考え方です。

今日は60代前半の人が頭部外傷で運ばれた症例をご紹介しましょう。
患者さんは60代前半、グループホームに入所する男性。
30分ほど前に室内で転倒し頭部打撲と出血あり来院しました。
独歩で来院したものの足取りが悪く、来院後は車椅子で受診待ちをしていました。
様子を観にいくと、明らかにステープラーが必要なくらい、ぱっくり傷口が開いています。

まあ頭部CTをとってステープラーでガチャンして、終わりという流れかな~と思いました。
しかし、いろんなことが不思議で、理解できません。病態が結びつかないのです。
私が気になったところを挙げてみましょう。

➀60代前半で、なぜ歩けないのか(脳梗塞の既往は定かでなかった)?
➁場所が言えないなどの、見当識障害がある。
➂グループホームに入所するには、若すぎる。
➃家族が来ない。(会社の元同僚が来ていた)
➄1か月前にも転倒して外科に受診した記録があります。(その時は早朝なのに飲酒後だった)
 この年齢で転んでばかりなのか?
➅いつもの意識レベル・ADLはどうなのか?

どうも腑に落ちませんが、とりあえず軽くガーゼで傷を保護し、医師の指示通り頭部CTへいきました。

CTから推測すると・・・?

CTをとって一目瞭然。
かなり大きな硬膜下血腫がありました。
ミドルラインがシフトしているくらいの出血量ですから、見当識障害が60代で起きても納得がいきます。

しかし、ここでもう一つ考えました。
今転んでこんな硬膜下血腫があるのなら、これは急性硬膜下血腫ということになります。
確かにぼけーっとしているけれど、バイタルサインや呼吸状態は問題なく、麻痺もありません。
こんな出血量の急性硬膜下血腫で、こんなレベルがいいはずない。

ということは・・・
1か月前の転倒!!
そう、これは慢性硬膜下血腫です。
今回の転倒は、慢性硬膜下血腫があったからこその転倒&頭部外傷だったのです。

これで、ぼけーっとして足取りが悪いことは説明が付きました。
上に挙げた疑問点の➀➁は解消されました。
では、他についてはどうかというと・・・

付き添いで来てくれた元会社の人に聞いたところによると、患者さんはひどい酒飲みのため離婚。
その後脳梗塞を発症してしまい、退職。麻痺はほとんど残らなかったけれど、家族がいないためグループホームに入所。
ホームでの生活は食事と入浴以外は個室なので自由。お酒も朝から飲んでいたとのことです。

まあこれらの情報で、残りの➂~➅の疑問は解消されました。
採血はしませんでしたが、話を聞く限り肝硬変はあったでしょう・・・。
この患者さんの場合は緊急事態と言うほどではないにしろ、CT上かなり派手な慢硬でしたから、即日脳外科による受け入れの可能な病院へ転院搬送となりました。

外来の面白いところは、確定診断がつく前にタッチすることです。急性腹症でも、いろんな疾患が考えられます。
そこを考えながら患者さんと接するのが、私は好きですね。

ただ当たった!嬉しい~というだけでは困りますけれど、何が患者さんの身体で起こっているのか、病態生理とデータ・症状を結び付けて考えていくと、とてもいい勉強になりますよ。