ゴールデンタイムに乗れるか!?



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こんなに厳しい、3時間のゴールデンタイム

脳梗塞患者は、3時間がキーワード

一つ前の記事でお伝えした、シンシナティプレホスピタル脳卒中スケール。
これは、病院に到着する前の段階で、救急隊が使用することを推奨されているものです。

病院につく前にこの患者さんが脳卒中(脳血管疾患)の疑いがあるとわかっていれば、病院到着後の動きに無駄がなくなるからです。
そこまでして急ぐ理由は、もちろん命を助けるためです。
そして、ただ助けるのではなくて、発症前の状態にできるだけ戻すため。

そのために行われる治療のうちの一つが、血栓溶解療法。
脳梗塞が多くを占める、脳卒中。
脳血管を詰まらせてしまった血栓を溶かすことで、再灌流を期待する治療です。

ただし、一度できた血栓を溶かすだけの治療ですから、抗凝固作用が半端じゃない。
一歩間違えると、今度は脳出血を起こします。
どこかしらに出血源があれば、そこからの出血が止まらなくなります。

仮に胃潰瘍による消化管出血があった場合、そこからの大量出血を起こす恐れがありますから、適応には慎重になります。

命を助け、後遺症を最小限に抑えるために行う血栓溶解療法。
危険が伴うため、適応はかなりしぼって行います。
その条件のうちの一つが、「3時間」ルール。

発症から3時間以内であれば、血栓溶解療法が適応になるというものです。
病院到着後ではなくて、「発症から」3時間というのがポイントです。
これ、なかなか厳しい条件なんですよ。

人間、1人になる時間がありますよね。
睡眠時間もそうです。
家族に「おやすみ」と言ってから、翌朝起きて来なかったので様子を観に行った家族が、倒れている患者さんを発見した・・・という場合、発症時刻は「最後に正常だったことが確認できた時間」となります。

もしかしたら家族によって発見される1時間前に発症かもしれませんが、それを証明できないのならば、発症時間は前夜「おやすみ」と言った時間になります。
発見からどんなに急いで救急搬送したとしても、すでにゴールデンタイムの3時間は過ぎていることになるのです。

逆に考えると、それだけ危険と隣り合わせの治療だからこそ、血栓溶解療法は適応を絞るということなのですが。
早く患者を脳卒中だと同定して治療にあたるということが、どれだけ難しいことがおわかりいただけたでしょうか?

コレもダメ!?厳しい3時間ルール、適応外とされた理由は?

ある日の午後、私の勤務先に呂律不全・不全麻痺の男性が救急搬送されてきました。
お昼ご飯を食べようとしたら、お箸を落とす・・・ということでした。
家族の発見した時間から、まだ1時間も経っていません。

まずルーチンの頭部CT、出血はありません。
そこで、頭部MMRIを撮ろうか・・・となりましたが、そんなことをしているよりも明らかに麻痺と呂律不全が出ているから、早く処置のできるところに送ろうとなりました。
当院には、脳外科医が不在だからです。

そこで近隣の総合病院に医師自ら連絡し、再度救急車に乗せて転院搬送となりました。
私も一応、救急車に同乗してついて行きました。

医師への申し送りを終えた私。
帰ってよいものやら考えあぐね、しばらくその場(救急室)にいたのですが。
医師が私のところへやってきて、質問しました。

「頭部の傷はなんですか?」
患者さんはその日の午前中、自宅内で少し躓いて頭部をタンスにぶつけたということで、ナートするまでもないのでシルキーポアで保護しておいたのです。

一応私もそれは気になっていたので、家族から時間を聞いてはいました。
午前8時頃の話です、と。
しかし、その時には家族は不全麻痺にも呂律不全にも気づいていなかったとのことだったので、ただ躓いただけね・・・ということにしておきました。
このことは、当院の初期対応にあたった医師にも報告はしてありました。

しかし、私のその返答に、脳外科医師達は顔を見合わせました。
「適応外ですね。」
「そうですね。」

えーっ!!
だって、ただ躓いただけだし、脳梗塞がその時発症したかわからないじゃない。

患者さんは、救急車内で段々話もできなくなっていきました。
最初は会話を交わすことができたのに。
ということは、急速に進行しています。

ここでもし再灌流されれば、言語障害は最小限で済むかもしれません。
不全麻痺も、また歩けるようになるくらいまで改善されるかもしれません。
でも、搬送先の専門医の判断は発症は午前8時、既に午後2時を過ぎており、血栓溶解療法は適応なしとのことでした。

タクシーで自分の勤務先に戻った私は、対応に当たった医師に結果を報告しました。
まだ正式な報告ではないし、もしかしたら方針が変わるかもしれませんが・・・。
一応、私が聞いてきた限りでは、適応は除外されましたと。

医師も驚いていました。
今やればまだ間に合うかもしれないのに、と。

しかし、裏を返せば、そんなに安易にできる治療ではないということなんですね。
どれだけ怖い治療か、知らないことの方が怖いですね・・・。

だからこそ、ACLS(二次救命処置)でも、血栓溶解療法の条件を厳しく定めているわけです。
ペーパーテストにも、必ず出て来ます。

ゴールデンタイムは3時間、ただし発症から。
その厳しい条件がよくわかった症例でした。