大騒ぎするのは、恰好悪い?



看護師ノート推奨の転職サイト



無駄に大騒ぎしたら、恥なのか? ~最悪のシナリオで行動する~

呼吸苦、血圧低下、ST低下・・・何を疑う?

80代の男性が、呼吸困難と血圧低下で来院しました。
施設に入所していたのですが、施設では心電図すらとることができません。
そこで、施設職員が病院に連れて来たのです。

確かに普段120㎜Hgくらいある血圧が、80㎜Hg代しかありません。
本人はすごく苦しいとは言いませんが、呼吸数も早いし、SpO₂も90%代前半。
高齢者はSpO₂の低いことはよくありますが、血圧低下もあります。
それに、この状況が徐々に起こったのではなく、「今朝から」始まったというのです。

ということで、まずはお決まりですが心電図をとりました。
心電図上、STの低下があります。
以前の心電図は当院に記録がないので、比較しようがありません。

STの低下があるとなると、ここは心臓を真っ先に疑うところです。
もし心カテが必要になった場合、当院では心カテはできません。
ですから、もしACS(急性冠症候群)なら、近隣の総合病院へ転院搬送となります。
しかもこの日は金曜日。
送るなら、今日の日勤のうちに送るべきです。

高齢者だし、誤嚥性肺炎あたりだろう、ちょっと経過観察で入院かな~なんて思っていたため、外来は、途端にACS(急性冠症候群)か!?と、バタバタし始めました。

酸素を投与し、ルートを確保して採血を行い、胸部レントゲン写真を撮りました。
ニトロペンも舌下。
採血の結果、トロポニンはマイナス。
心筋酵素も特に上昇は見られません。
胸部レントゲン写真でも、心胸比が50%以上あることが確認されました。

どうもACSではなさそうということで、もう少し詳しい検査を行うことになりました。
次に行ったのは、心エコ―です。

心エコーは侵襲はないものの、時間がかかることと技師の腕で結果が左右されること、更に医師の読影結果も必要となる検査です。
ACSを疑っている間は、心エコ―は適応ありません。
ゆっくり検査している間に、心カテのできる医療機関に搬送した方がよいですから。
とりあえず急がないことがわかって、初めてできる検査です。

さて、その結果ですが。
心嚢水が貯留していることがわかりました。
施設からの呼び出しで到着した家族と相談し、リスクの高い心嚢穿刺はせずに、利尿剤で経過観察することになりました。

大騒ぎした私って、バカだったの?

結果として、心嚢水貯留によって呼吸状態と循環状態の悪化が認められた症例でした。
ACSかも!救急搬送かも!!
と緊急性をアピールするほどではありませんでした。

担当していた医師も若手の医師だったので、診断まで時間がかかりました。
私も医師も、心電図上ST低下があったことから、セオリー通りにまずはACSを疑い、検査を進めていきました。
私はこの患者さんの検査や処置を優先していたので、他の仕事には手を出せなくなりましたが、それに対し文句を言う人は(その時は)いませんでした。

私は、大騒ぎしたとしても助かる命が助かるならそれでいい、と思っていました。
今回の場合は心嚢水貯留が原因で、しかも積極的治療はしないことが家族によって決められたため、そう急ぐことはありませんでした。
その結果を受け、「あんなに大騒ぎしておいて」と言った看護師がいたのです。

彼女は循環器には明るくないので、こういうときにはあまり手を出しません。
実際、私と他の看護師とで検査やら処置やらしていたのですから、彼女の手を直接わずらわせてはいません。

しかし、その看護師(しかも私より先輩です)は、その医師の経験の足りなさや知識が不足している、平たくいうと「できない」という内容の言葉を言ったのです。
私も医師も、〝たいしたことないのに大騒ぎしすぎだよね”いう意味。

嫌味というかバカにされたというか、そんな発言をされて私の気分がよくなかったのは、言うまでもありません。
でも、考えてみてください。
ST下降があっても前回の心電図と比べようがなく、ACSでも出現する症状があったのなら、まずそれを疑って悪いことはあるのでしょうか?
急ぐ必要なかったね、というのは結果論です。

私の心電図の読み方が悪いのでしょうか?
それも気になって、その時の担当医に後日、こそっと聞いてみました。

あのとき、ACSを疑って緊急に検査を進めていったのは、間違いだったのでしょうか?と。
医師は、「わからない間は、まず考えうる最悪のシナリオのもとで行動するべき」と答えました。

結果としては急ぐことはなかったけれど、もし本当にACSだったら、のんびり行動していたら助かるものも助からなかった可能性もある。
せっかく病院に来たのに助けられないなんて、悔しいじゃないかって。

知らないからこそ、「大騒ぎしすぎだよね」と言えるんですよ。
そう、大騒ぎしたって、いいじゃない。
恰好悪くたって。
それで助けられるならば。

イヤミを言ってきた彼女は、実は上司に当たる人です。
しかも、現場では結構な発言力を持っている人なのですが・・・そういった権力と正しいことを言っているかは、違うものなんですね。

でも、部署内の人間関係や権力を理由に行動を変えていたら、それは医療ではなくなってしまいます。
私、間違ったことしていなくてよかった。
この先生は、私のしたことを肯定してくれて(わかってくれて)良かった。
そう思うことにして、彼女の発言に対して批判を言うのはやめることにしました。