子供が後追い自殺という結末



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息子が父親のあとを追い・・・3人の葬儀を同時に行う、異例の事態

大黒柱は、70代の父親

70代男性のOさんは、高血圧と心不全で循環器科に通院していました。
無駄なことは話さないOさんでしたが、いつもおだやかで、私も年をとったらあんなふうに穏やかになりたいなぁと、密かに思っていました。

Oさんには、未破裂のAAA(腹部大動脈瘤)があり、定期的にCTで大きさをフォローしていました。
だんだん動脈瘤のサイズは大きくなり、50㎜を超えたところで、循環器の医師がそろそろ手術を検討しないと・・・という話を切り出しました。

OさんはADLも自立しているし、認知症もありません。
それどころか、洗濯物も自分でしているくらい、全てにおいて自立している人でした。
高齢で、認知症もあって、寝たきりで・・・そんな人には、なかなかいつ破裂するかわからないAAAのオペを勧めるということはありません。

しかし、Oさんなら絶対に手術の適応です。
私の勤務する病院では対応できないので、近隣の循環器・心臓血管外科へ紹介状を書きますよ、という話もしました。
ところがOさん、するもしないも、はっきりしないのです。

そこでポツリと言ったのが、「息子がなぁ。」という一言でした。
Oさんの息子さんですから、もう40代だと思います。
そんな息子がなぜ、手術のネックになるのでしょうか?

その後、何度か定期処方のために外来に通院していたOさん。
いつの間にか、AAAのオペについての話はうやむやになってしまいました。
そしてある日、心肺停止で近隣の総合病院へ救急搬送されたという連絡が来ました。
診療情報提供書を至急送って欲しい、という照会状がFAXで送られて来ました。

医師が当院での治療経過をまとめ、こちらも急いでFAXしました。
私達は、「ああ、やっぱりラプチャーしたか・・・」と、ガックリしてしまいました。
もっとしつこく手術を勧めておけばよかった、と。

更なる悲劇が・・・

その後Oさんがどうなったか、手紙を送った先の病院から連絡が来るよりも先に、Oさんの妹さんが病院にやって来て、経過を教えてくれました。
Oさんは運び込まれた翌日、亡くなったそうです。
やはり死因は、腹部大動脈瘤の破裂。
話をすることもできず、息を引き取ったとのことでした。

なんて声をかけたらよいかと言葉を選んでいると、妹さんが続けて言いました。
心肺停止で病院に運ばれたと聞いて、次男が首つり自殺をし、Oさんよりも先に亡くなったというのです。
更に、長男も翌日、走って来る車に飛び込んで亡くなった。
長男も、自殺したようだと。

もう、言葉になりませんでした。

葬儀は、3人分まとめて行うことになったそうです。
妹さんは律儀に、その報告のためだけに来てくれたのです。

Oさんは午後になると、「洗濯物をとりこまないとならないから、急いで帰るよ。」と言っていました。
息子がいたのに、Oさんは自分で家事の全てを行っていたのです。
息子が2人とも自宅から出ない引きこもり状態で、奥さんも既に亡くなっているOさんの家では、Oさんが経済的にも家事も、全ての大黒柱となっていたということを、この時に初めて知りました。

手術を勧めたときに、「息子がなぁ。」と言っていたのは、この2人の息子のことを思って、踏み切れなかったということでしょうか。
本当に破裂するかわからないもののために、リスクを負って手術をすることで本当に何かあったら、息子が生活していけない・・・と。
これは私の推測ですが。

まさか、父親の死が息子達の自殺を引き起こし、3日のうちに一家3人が亡くなるという事態が起こるとは、私達も思いませんでした。
妹さんが「お世話になりました」と言いながら告げた内容は、スタッフ誰もが驚き、本当に言葉が出なくなってしまうほどの衝撃でした。

1人で食っていける大人にする。
私はそれをモットーに子育てしています。
経済的に親にパラサイトする子が世の中に多いことはわかっていましたが、Oさんの場合は本当に、息子達の心の支えにもなっていたのですね。
なんとも切なすぎる結末でした。



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