精神疾患の患者が、癌になったら?



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精神疾患は、身体の病気?

明らかな息切れ・・・それでも受診しないワケ

45歳の男性が、紹介状持参で受診しました。
患者さんは統合失調症で、もう15年ほど精神科に通院していました。

紹介状のこの精神疾患の記載を見て、困ったなあと思いました。
話がきけるか?
45歳で、誰がついてきているのか?
話のわかる人が、キーパーソンになっているのか?
どこまで積極的に治療するのか?

こんなことを考えながら、本人の元へ問診をとりに行きました。
というのも、これはなんらかの癌だろうな・・・と思わせるような内容の紹介状だったからです。

高度な貧血と呼吸困難、それから肝機能と腎機能の異常・・・。
クリニックからの紹介状に添付されていた採血データからも、何かしらの貧血を起こすだけの理由、つまり腫瘍性病変のあることが考えられました。
いくら貧血といっても、胃潰瘍だけでは、肝臓と腎臓に支障が出るとは思えませんから。

患者さんの元へ行くと、女性の付き添い者がいました。
関係を尋ねると、職場の上司。
福祉の関係で、仕事に就いていたという男性。
でも、受診をするにもキーパーソンである母親は、脳梗塞を起こした父親の介護で付き添うことができないため、代わりに付いてきたとのことでした。

調べたら、悪いものが出てきそうだな・・・と、診察についている看護師も、担当した医師も思いました。
でも、紹介されてきているのですから、調べないわけにはいきません。

まずは採血と胸腹部の単純CTをとりました。
単純CTだったのは、クレアチニンが高くて造影もできないから。
結果としては、おそらくS状結腸癌原発の肝メタ、メタによって血管が圧迫されて血流が低下したための腎機能の悪化・・・と考えられました。

単純CTでもわかるほどの癌です。
それも、かなり広範囲。
手術の適応からは除外されますし、抗癌剤治療をするにしても、腎機能が悪すぎる。
おまけに本人の理解も得られない。

本来は他人ですから、付き添いの職場の上司に、男性の病状を伝えることはできません。
しかしこの場合、本人が明らかな息切れを起こしていて日常生活に支障が出ているにもかかわらず、受診をするという行動をとれない、精神疾患を抱えています。
親も来ていません。

そこで医師は、現実を本人ではなく、職場の上司に伝えました。
これは癌で、かなり進行している状態。
抗癌剤治療も困難なくらい進行しているが、まずは輸血だけはしないとならないと。
家族への連絡をお願いし、本人はそのまま入院となりました。

まだ45歳です。
単純にS状結腸癌に罹るにも、若いです。
それが肝メタもあり、高度な貧血でトイレに行くだけで息も切れる・・・。
そんな状態なら、通常なら自分でも(何か悪い病気ではないか?)と心配して、受診するものです。

しかし、精神疾患があるとその判断すらできないのです。
なんで病院に行かなかったのか、という質問自体が愚問。
その必要性や病院に行くという選択肢が、男性の中にないのです。

本来は、周囲の人間がその異常に気づき、サポートしなければなりません。
この男性の場合、母親は父親の介護があるとは言え、一緒に暮らしているのに男性の異常には気づけませんでした。
母親も、年を重ねている上に介護をしており、母親の責任を問うことはできません。

昔なら、障害のある人が生きていくことは難しかったと思います。
しかし、戦後は心身に障害のある人も、少しずつ社会が受け入れていき、生きていくことができるようになりました。
ただ、親が年をとったり亡くなってしまうと、これらの人達は病院に行くという当たり前のことすらできなくなってしまうのです。
こういうケースが、これから出て来る時代です。

男性は、一応抗癌剤治療をすることになりました。
正直、腎機能的にもどこまでやれるかわかりませんし、腫瘍を抑えることができるのかどうかもわかりません。

精神疾患があるとは言っても、まだ45歳です。
本来なら、助かるハズのものだったと思うのです。
精神疾患は、身体疾患でもあるのです・・・。