内視鏡に潜むリスクは?



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健康診断のつもりが、緊急入院!

健診は、サクサクっと受けて終わるもの!?

健診には、企業健診や住民健診、いろいろな種類がありますね。
平たく言うと、財源がどこかっていう違いでしょうか。
その財源の懐具合によって、検査項目が違うわけです。

市町村による健診なのか、企業が社員に対して行う健診なのか。
その場合、どこまでが自己負担なしで受けられるのか。
これは、それぞれ違います。

例えば胃がんに対する検査には、通常胃カメラと胃バリ(胃透視)があります。
どちらがいいとも言えないのですが(こちらを参照してくださいね)、会社側が胃カメラを選択していたとします。
その場合、波風たてないようにしようと思えば、社員は胃カメラを受けます。

ほとんどの会社が、健康診断を受ける時間は業務時間内としています。
午前に行うことが多いので、午後を出勤とするか、有給を認めるかも会社ごと違います。
しかし、午後から仕事という人も多いでしょう。

今回は、会社の健康診断で胃カメラを受けた男性の症例をご紹介します。
40代のこの方は、午前に健診を受けて、午後は仕事に戻るつもりでした。
(会社から受けろと言われているから、ささっと受けて社に戻ろう。)と思っていたのです。

サクサクっと受けて終わるつもりの健康診断。
事前説明はほとんどなしに、決められたルートで検査を受けて周ります。
そして、最後に受けた胃カメラで、どうなったのでしょうか?

健診の胃カメラでポリープ発見、EMR→大出血!!

その日の午後、私の部署(外来)は、比較的落ち着いていました。
緊急入院もないし、基本的な内科診察はクラークさんがメインでついています。
フリーの看護師もたくさんいたので、私はちょっと手持ち無沙汰に。

そんなとき、内視鏡室から応援要請がかかりました。
内視鏡と外来はお互いに行き来することが多いので、人が少ないときや緊急時には、お互い手伝うことになっているのです。

私はすぐに駆けつけました。
頼まれたのは、これから大腸カメラ(CF)をする患者さんの、ルートをとること。
これはすぐに終わってしまったので、とりあえず「他に手伝うことない?」と、中の検査室に声をかけに行きました。

すると、バタバタしている部屋があります。
のぞいてみると、超ベテランの内視鏡ナースが次々といろいろな機材を医師に手渡しています。
この人がバタバタすることは、滅多にありません。
画面を見ると、出血しているようです。

「EMRやったら、もう1時間以上出血が止まらない。」
そう言って、止血処置に当たっていました。
医師も2人応援に駆け付け、ようやく出血部位にクリップをかけることができました。
トータルで2時間以上かかってしまいましたが、ひとまずほっと一息。

でも、このまま帰す訳にいきません。
入院して絶食、明日止血確認の内視鏡をもう一度やることになりました。
その頃にはオピアトやらドルミカムやらをもられていた患者さんは、ボーっとしています。

しかし、入院と言われた途端ぴくっとなりました。
「えっ!?入院?? このあと仕事あるんですよ・・・。」
そう言われても、こちらもまだこのあと出血する可能性もありますから、帰せません。
なんとか説得して、家族にも連絡をとって、病棟へ上げました。

この患者さん、もとは患者さんではなくて、健診を受けに来た「健康な人」です。
胃がん検診のために胃カメラをやったら、たまたまポリープがあったのでEMRをしただけ。
何かあったら組織診にまわすために胃カメラをしているのですから、カメラを挿れてみてポリープがあったら取るのは当然です。

しかし、患者さんは、「サクサクっと受けて帰ろう。」と思っていたのですから、たまったものではありません。
現に、この患者さんは午後にお客さんのところへ寄る予定を入れていたそうです。

もちろん予定はキャンセル。
着の身着のままで一泊入院。
そして、翌日もう一度カメラをして退院されました。
後日談ですが、生検の結果は、悪性のものではありませんでした。
偶然、生検した部位に動脈がはしっていたのでしょう。

この患者さんは、良性のポリープを切除しただけで大出血を起こし、予定外に緊急入院となりました。
でも、これはレアなケースではあっても、可能性としては起こり得るものです。

内視鏡検査には同意書をとっていると思いますが、そこにも出血や穿孔のリスクは記載されていますよね?
みんなふんふん、とサインをしてくれます。
でも、年に数例であっても、このようなことは起こるのです。

これ以降、私は「軽く胃カメラ」というニュアンスでは説明しないようにしています。
それまでは同意書の文面を見て、大げさだなあと思っていましたがね。

健康診断のつもりで来ても、検査の内容によってはリスクを伴うのだということ、そういった説明は必要です。
ちょっと胃が痛いと来院し、ちょうど今日は内視鏡が空いてるよ・・・そのまま検査していく?と言われ内視鏡室へGO!
そんな流れが、よくあります。

しかし、そういう時にもあとから「聞いてないよ!どうしてくれるんだ!」とならないように、事前の説明をしなくてはいけません。
なにより、胃カメラは簡単にできるけれども、リスクもあるのだということを、私達が理解していなくてはね。