愛されるおばあちゃんの秘密



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みんなに愛される90歳、みんなに嫌われる90歳

みんなに愛され、大事にされる90歳の女性

私の勤務先の病院は、敷地内にデイサービスを併設しています。
そこに週3回来ている90歳の女性に、Oさんがいます。

Oさんは、ADLは自立していますが、1人暮らし。
受診のためだけに移動するのは大変なので、デイサービスのある日についでに受診をしていきます。

Af(心房細動)があるので、診察前には必ずワーファリンコントロールのためのPT-INR採血があります。
採血をして結果が出るまでの間、外来で待っていただきます。

採血室へ移動するのも大変ですから、私達看護師が診察室の隅っこで世間話をしながら採血をします。
その時に、毎回必ず言う言葉があります。
それは、「感謝」です。

「こんな90歳のおばあさんが不自由なく生きていられるのは、皆さんのおかげなの。
感謝感謝です。
デイに来ればみなさんが優しくしてくれるし、家にいる日は近所の方が親切にしてくださる。
本当に感謝ですよ。」

そう言うのです。
今の時代、医療職はサービス業。

お金払ってるんだから、いい医療をするのは当たり前。
待ち時間が長いと、早くしろと言う。
それでいて診察時間が短いと、もっと自分の話を聴けと言う。

矛盾するようなことでも、とにかく自分だけは特別扱いしろ・・・とでも言わんばかり。
こんな患者さんが、特に50代以降に多く感じます。
年齢を重ねたら、人格は磨かれていくものではないのでしょうか?

Oさん自身、人に対して感謝することを人生のモットーにしているようです。
もしかしたら、O家の家訓なのかもしれません。
ご主人も息子さんも教師という教育一家なんですね。
残念ながらご主人はもう他界されていますが、おそらく息子さんも素晴らしい先生なのだと思います。

愛される90歳、嫌われる90歳
さてこのOさん、気になることがあるそうです。

「最近、私達のようなおばあさんでもひどいことを言う人がいるのよ。
私達のように年をとると、誰かの世話にならずには生活していいけないのにね。

この間なんて、クリスマスのお祝いをみんなでしたのだけれどね。
その時に、つつになった首巻き(ネックウォーマーのことね)を、デイに来ている人みんなに1枚ずつくれたの。
本当に嬉しかったわ。

でもそのおばあさん、こういうのよ。
あんたね、感謝感謝なんて言ってるけど、このお金だって利用料払ってるんだから
感謝なんてする必要ないのよ。

ひどいと思わない?
言っちゃったわ。
皆さんが私達のためにしてくださったことにケチを付けてはいけませんよ、感謝しなくちゃって。」

すごいなあと思いました。
Oさんだって、利用料を払っているし、病院がボランティアでやっているワケではないことはわかっているのです。
それでも、感謝の気持ちが必要だとおっしゃる。

愛される人、嫌われる人の違いは「口癖」ではないでしょうか。
言葉は言霊とも言われますよね。
口癖は、その人なりを表しているのかもしれません。

愛される人は口癖が違う

比べてみると、違いは一目瞭然ですね。

私達の看護や、デイでのサービスに至らない点があることは、私達自身が重々承知しています。
だから、満足しているわけではないと思うのです。
ひょっとしたら、至らない点があるからこそOさんは「感謝、感謝」と自分に言い聞かせているのかもしれません。

でも、Oさんはその人柄の良さで、お金で買えないものを持っています。
近所の人は、お金をもらっていないのに、心配してしょっちゅう顔を出してくれます。
調子が悪くなったときも、近所の人が車で乗せて来てくれます。

私達医療従事者も、いくら仕事とは言っても、やはり人間です。
気持ちよく接することのできる人やたくさん声をかけたくなる人がいれば、逆にできる限り近寄りたくない人だっています。
Oさんがデイサービスで戒めた同じ90歳の利用者さんは、おそらく後者ではないでしょうか。

同じ90歳でも、愛されてみんなが近寄っていく人もいれば、逆に離れていく人もいます。
その違いは、Oさんの言う「感謝」にあるのではないでしょうか。

私達医療を提供する側も、患者さんに対して感謝の気持ちを持つことが必要なのではないでしょうか?
お金をもらうから行う、という損得勘定ではなくて。

私が直接怒られたのではありませんが、やんわりとOさんに他人への感謝の気持ちを常に持ちなさい、と教わったようでした。
このような人が、本当に教養と人格の備わった人なのでしょうね。