アトロピンが無効な徐脈とは?



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アトロピンは、徐脈の特効薬ではない!!

アトロピンに反応しない徐脈

以前、こちらの記事で、嘔吐とふらつきを主訴に来院した80代女性の患者さんが、実は完全房室ブロックだったという記事をお伝えしました。
患者さんは、ペースメーカーの埋め込み術を受けるため、近隣病院へ救急搬送されました。

私が医師に嘔吐下痢症かと思っていたけれど、高度な徐脈であり、完全房室ブロックの波形であることを医師に伝えた際、実は医師から一つの指示を受けていました。
「アトロピン1A、静注して!」
と。

そう、徐脈に対する第一選択薬ですね。
私はもっともな指示だと思い、アトロピンを用意し側管から入れました。
しかし、3分経っても波形に変化はありませんでした。

この3分というのは、ACLSで習ったものです。
「アトロピンの急速静注は、0.5mgを3~5分間隔で投与」
というもので、徐脈のアルゴリズムの中に組み込まれています。
タイマーを使って、記録しつつ投与し、反応を見るために波形チェックしましたが、変化はありませんでした。

さてここで、何がわかるでしょうか?
徐脈なのに、アトロピンに反応しないということは、この患者さんはペースメーカーが適応になる徐脈である、ということです。

洞結節と房室結節には、迷走神経が分布しています。
迷走神経が優位になると、アセチルコリンの分泌がさかんになり、そのために心拍数が下がり、心拍出量も減ってしまうのです。
アトロピンは、このアセチルコリンが洞結節および房室結節に作用するのを、ブロックする働きがあります。

つまり、洞結節・房室結節由来の徐脈ならば、アトロピンが効くはずなんですね。
ところが、この患者さんには効かなかった・・・。
それは、迷走神経の分布する場所が原因ではない、ということになります。

それはどこでしょうか?
His束やさらに遠位の伝導系は、迷走神経が分布していない場所なので、必然的にアトロピンへ反応しません。
これらのブロックにより現れる波形は、2度2型房室ブロック(Mobitz型)もしくは3度房室ブロック(完全房室ブロック)です。

ですから、心電図波形上で完全房室ブロックの患者さんにアトロピンを使うのは、本来「??」と思うべきだったのかもしれません。
しかし、逆にアトロピンが効かないとなれば、本当に完全房室ブロックだと言いきることもできます。

ですから、ペースメーカー埋め込み術をすぐ受けられる病院への転院搬送は、正しい選択だったわけです。
相手先も、心電図波形上だけではなくて、アトロピンも無効だったことがわかれば、「本物」と受け入れ準備を整えていたことでしょう。

ペースメーカー埋め込み術ができない場合、何ができるのか?

しかし、本当はアトロピンを選択することよりも、私達でもできることがあったんですね。
私も、今こうして参考書を読みながら反省しているところですが。

経静脈ペーシング(=ペースメーカー)ができないならば、経皮ペーシング(transcutaneous pacing:TCP)があるではありませんか!
当院のAED・DCの機械には、経皮ペーシングの装置も備わっています。
一応ACLSの講義を受けに行ったときには、私も教わったんですけどね・・・。

まだ意識のはっきりしていた患者さんではありますが、ショック症状(冷汗)を呈していたのですから、検討してもよかったのかもしれません。
現実は、医師を差し置いて「経皮ペーシングしますか?」なんて、言えませんけれど。
でも、そこに気づく自分ではいたかったなぁと、今になって反省しています。

小さな病院では、できることは限られています。
心筋梗塞を起こしたって、心カテはできません。
でも、患者の酸素化を図りつつ、バイアスピリンとプラビックスを噛ませ投与することは、可能です。

規模が小さいから、専門医がいないから・・・そう言ってしまえばそれまで。
事実ですから。

でも、
これ以上患者の状態を悪化させないために、何ができるか?
搬送先についてからすぐ次の動作にうつるために、何ができるか?
は、常に考えていたいものですね。

どこに勤めていても、私達は看護師なのですから。